構造形成 | 研究内容 | 名古屋大学 宇宙論研究室 (C研)

構造形成

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図1 宇宙の大規模構造(SDSS/NASA)
図2 ハッブルによる銀河の音叉分類図
図3 銀河の回転曲線(横軸は銀河の中心からの距離、縦軸はその距離にある星の速度)(Begeman 1989)
図4 銀河団Abell 2218の重力レンズ効果
図5 宇宙マイクロ波背景放射の偏光(ESA and the Planck Collaboration)

宇宙にはたくさんの星が存在します。また、狭い領域にたくさんの星が集まってできている銀河などの天体もあります。より大きなスケールでは、銀河団や超銀河団と呼ばれる銀河の集団や、ボイドと呼ばれる銀河がほとんど存在しない領域があることもわかっています。これら銀河団やボイドを大きなスケールで見ると、図1のようにスポンジのような構造になっていることがわかり、これを宇宙の大規模構造と呼んでいます。
このように宇宙には複雑で階層的な構造が存在します。このような宇宙の構造はいつごろ、どうやって、どの順番でできたのでしょうか。宇宙の構造の解明は、宇宙の歴史や、現在の宇宙の姿を解き明かすための大きなカギとなります。

このページでは、宇宙の構造形成に関するC研の研究内容について紹介していきます。

宇宙が誕生したのは今から138億年前だと考えられていますが、その始まりには何が起きたのかということは宇宙論において最大の謎の一つであり、様々な理論モデルが考えられています。標準的なシナリオでは、宇宙は無から誕生し、インフレーションと呼ばれる機構によって急激に膨張したと考えられています。その後、ビッグバンという高温度、高密度の初期宇宙が作られました。(詳しくは初期宇宙のページをご覧ください)。
ビッグバン直後の宇宙は陽子・中性子・電子がプラズマ状態だったと考えられています。その後宇宙は膨張するに従い徐々に冷えてゆき、様々な原子が形成されました。その時の情報を含んでいる宇宙マイクロ波背景放射の観測から、この時代にわずかに物質の密度揺らぎが存在していたことが明らかになっています。この揺らぎを構造の種として、密度が大きいところは重力によって周りからより多くの物質を集め、より密度が大きくなってゆきました。やがて十分物質が集まったところで、光を発する天体が形成されたと考えられています。原子が構成されてから、最初の天体(初代星)ができる期間のことは暗黒時代(ダークエイジ)と呼ばれています。
宇宙で初代星が誕生してからしばらくすると、たくさんの星が重力によって束縛された集合体が形成されました。これを銀河と呼んでいます。銀河は一つ一つその形や大きさが異なりますが、図2のように分類することができます。しかしながら、このように多様な銀河がそれぞれどのようにできたのか、お互いにどのような関係があり、その本質的な違いは何なのかということは現在でもあまりよくわかっていません。
またほとんどの銀河の中心には質量の非常に大きいブラックホールがあり、太陽質量の100億〜1000億倍になるものもあります。この銀河中心のブラックホールの起源は何なのか、中心ブラックホールを含めた銀河全体がどのように進化していくのかなど、銀河の形成や進化にはたくさんの謎があります。また、銀河の中心からの距離と回転速度の関係をグラフにすると図3のように半径の大きいところで平らな直線になることがわかっています。このことを理論的に説明するためには、目に見えない大量の物質が銀河の中に存在する必要があります。この「目に見えない大量の物質」はダークマター(暗黒物質)と呼ばれていて、多くの候補が存在していますが、その正体は現在でもわかっていません。

銀河が集まると銀河団という銀河の集団が形成されます。銀河団の宇宙論における役割は重要で、古くから研究が行われています。
また、銀河団スケールでもダークマターが分布することが確かめられており、銀河団も銀河と同様に、ダークマターと深い関わりがあります。銀河団は、重力レンズ効果を用いることで、ダークマターの正体を解明する手がかりとなります。
重力レンズ効果とは、重力の強いところを通過する電磁波の軌道が曲がってしまう現象です。重力レンズ効果はアインシュタインによって予言され、実際にその現象が確認されています。重力レンズ効果を用いると、銀河団の背後にある天体の歪み具合から重力源の銀河団の質量が計算できます。一方、銀河団からの電磁波を直接観測することでも銀河団の質量を推定することができ、重力レンズ効果から計算した質量とを比較することにより、目に見えない物質、すなわちダークマターの質量を計算することができます。現在、ダークマターはエネルギーに換算して通常の物質よりも6~7倍多く存在していることがわかっています。構造形成においてダークマターの担っている役割は重要で、天体形成はダークマターが多く分布しているところで起きたと考えられています。しかしながら、ダークマターの分布と天体形成の対応関係の詳細については未だ明らかになっていません。
近年、ボイド領域についても研究が盛んに行われるようになってきました。ボイドは大きいもので数十Mpcに達するものも見つかっていますが、その典型的な大きさ、形状、成長の仕方など、たくさんのことが謎に包まれています。
ボイドが宇宙論的に面白いのは、現在の宇宙を膨張させていると思われている、ダークエネルギーの影響が現れるかもしれないということです。(ダークエネルギーについて詳しくは宇宙の加速膨張のページをご覧ください。)
一方、ボイドには物質がほとんど存在しないため、その時間進化を調べれば宇宙の膨張(ダークエネルギー)の正体に迫れるかもしれないというアイデアがあります。

その他の構造形成についての研究の例として、宇宙磁場というテーマがあります。磁場は物質に伴って運動するため、宇宙の磁場の構造と天体の構造には深い関わりがあります。たとえば、銀河や星などの磁場を持った天体が回転していると、磁気回転不安定性(MRI)というメカニズムによって天体の成長を促進することがあります。よって、宇宙の磁場の構造を探ることは構造形成を知るうえで非常に重要となるのです。このような磁場は、星や銀河よりも大きいスケールにも存在する可能性が高いと思われています。銀河よりも大きいスケールの磁場のことを宇宙磁場と呼んでいます。宇宙磁場の詳細は未解明であり、その起源や強度は宇宙論の研究対象です。
C研ではこの分野において日本をリードする研究成果を挙げています。現在C研で取り組んでいる宇宙磁場の研究には、例えば宇宙磁場の強度によって銀河の数や銀河団のガスの分布が変化することをシミュレーションで再現する研究などがあります。

C研ではこれらの銀河、銀河団、ボイド、大規模構造、ダークマター、宇宙磁場などをテーマにして構造形成を研究しています。

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