宇宙マイクロ波背景放射(CMB) | 研究内容 | 名古屋大学 宇宙論研究室 (C研)

宇宙マイクロ波背景放射(CMB)

English
図1:これまでのCMB観測の変遷[S.Arai]
図2:Planck衛星によるCMBの温度揺らぎの観測(Plank 2015)

宇宙マイクロ波背景放射(Cosmic Microwave Background)とは、宇宙誕生後約38万年の宇宙の状態を私たちに伝えてくれる光子のことです。 ビックバン宇宙論によると、宇宙初期は非常に高温、高密度であったと考えられています。この時、電子と陽子は結合した状態を保っていられず、宇宙空間はプラズマ状態にあります。また、光子と自由電子はトムソン散乱により互いに強く相互作用をしています。しかし、宇宙が膨張するとともに、温度が低下するので、宇宙年齢約38万年頃に自由電子と陽子が結合して水素原子が形成されます。この時、宇宙空間に自由電子がほとんどなくなるので、トムソン散乱が起こりにくくなります。これにより、光子は自由電子に散乱されることなく宇宙空間を伝播することができるようになります。この水素原子形成の時代を宇宙晴れ上がり、または再結合期と呼びます。光子は最後に散乱をしたこの時期から約138億年をかけて地球に到達します。地球に到達した頃には、宇宙の膨張により約3Kまで温度が下がっています。この非常に低温な放射は、マイクロ波と呼ばれる波長で観測されるので、この光子のことを宇宙マイクロ波背景放射と呼びます。

1964年、ペンジャスとウィルソンが宇宙マイクロ波背景放射を初めて観測しました。その後、1989年にNASAによって打ち上げられたCOBEが行った観測では、宇宙マイクロ波背景放射はほぼプランク分布と一致するものでした。これは、宇宙がかつて熱平衡状態にあったことを意味しています。また、その温度が方向によらずほぼ一定でありました。これは、宇宙の等方性を証明するものでした。さらに、約10万分の1の大きさの温度の揺らぎが存在することも明らかになりました。この温度揺らぎは、のちの宇宙の構造形成の種となる密度揺らぎの存在を裏付けるものとなっています(詳しくは構造形成のページへ)。

近年ではWMAP衛星やPLANCK衛星などにより、CMB温度揺らぎや偏光の精密な観測がされています。これらのデータを用いることによって、重力理論やインフレーション理論などの制限や検証が行われています。

初期宇宙 | 宇宙マイクロ波背景放射(CMB) | 暗黒時代と宇宙再電離期 | 構造形成 | 加速膨張 | 重力波

▲ Top